back 理事長 相沢英之 のメッセージ
       「地声寸言」
  2008.10.27リリース

第二十二回 <「解散など考える時か」>
 米証券大手のリーマン・ブラザーズの破綻を契機として、米国の金融不安は全世界に波及し、金融危機の深刻化と実体経済の悪化という「負の連鎖」は途切れる兆しは見えず、「世界同時で不況」が現実味を帯びてきた(十月十一日付、朝日)
 米自動車大手ゼネラル・モーターズ(GM)の格付けを格下げの方向で見直しという九日午後の大手格付け会社の発表が、連日下落しているNY株の暴落の引き金となり、十日、一時八千ドル割れのパニック状態となり、終値も八五七九.一九ドルとなった。
 東京の株式市場も四年十ケ月ぶりに日経平均が一万円を割り込み、十日八二七六円四三 銭の終値となった。五年四ケ月ぶりの安値である。
 米国は、最大七千億ドル(約七十兆円)の公的資金を活用できる金融安定化法を成立させているが、十日午前ブッシュ大統領は、公的資金による金融機関への資本注入を前向きに検討していることを正式に表明した。
 一方、十日午後(日本時間十一日未明)日米欧の主要七ケ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議がワシントンで開幕、世界的な金融危機の打開に向けて、対策を検討したが金融機関への公的資金の注入などの対策を打ち出している。
 日本ではかって平成十年金融危機打開のため国会が「金融安定化に関する特別委員会」 いわゆる金融特会を開き、金融二法(「金融機能の安定化のための緊急措置に関する法律及び預金保障法の一部を改正する法律」)を成立させ(法案審議を担当した金融安定化に関する特別委員会の委員長は小生)主要銀行を初め金融機関に不良債権処理のため約十二兆円の公的資金の注入を行い、危機打開に効果があったが、中川昭一財政・金融担当相はその経験を踏まえ、民間金融機関への公的資金による資本注入の重要性を訴えると見られている。
 この世界的金融危機の深刻化を眼の前にして、米欧諸国も急速に対策を打ち出している。独の打ち出した銀行預金の全額保護に他の欧州諸国も一部追随する、米欧への中央銀行六行が協調利下げを行い、英国が大手銀行に最大八兆七千億円の公的資金の注入を発表した。米国のFRBの公定歩合での貸出残高は、八日時点で九八一億ドルと約一ケ月前の五倍にも膨らみ、日本では日銀が十八営業日連続公開市場操作(オペ)を実施、十日は銀行間で資金を融通する短期金融市場に総額四兆五千億円を即日供給することにした。
 米国の対日赤字は五年ぶりに低水準となったが、他方、日本は八月輸入額が輸出額を上回り、正月休みの影響で輸出が減る一月を除けば、約二六年ぶりに貿易赤字を記録し、先行き悲観論も広がっている。民間シンクタンク三十四社による実質成長率の予測値平均は本年度が〇.五%、来年度が一.二%と低迷している。
 三連休明けの東京の株式市場は各国の対策を反映し、十四日終値で九四四七円五七銭円(一一七一円一四銭高)と急反撥したが、今のところ政府の株価対策としては、自社株買いの規制を年内いっぱい一部撤廃するといった程度のもので、これではまことに不充分ではないか、と言われている。
 いずれにしても、景気対策、株価対策などとして緊急に具体的な対策の実行を強く要請されている麻生内閣としては、第一次補正に続いて第二次補正も国会に提出する考えを示しているが、よほど思い切った財政面からのテコ入れを考えないと有効な対策とはなり難いと思う。
 最大野党の民主党は、本年度補正予算、新テロ対策特別措置法改正案の早期採決を容認するという作戦の下に、衆議院の早期解散を誘導する方針であったが、世界的な金融危機で与党内に衆議院解散先送り論が強まってきたことを受けて、解散誘導戦略の軌道修正を始めたという。民主党は、党としての金融危機対応策を取り纒め、政府に提案することを決定したが、党内には解散先送りを半ば覚悟する声も出始めているという(この頃、主として十一日毎日の記事による)。
 そこで、私が言いたいのは、いかなる理由があるにもせよ、国会の解散、総選挙で政治的空白を作るべきではなく、先ず、金融不安の解消、景気回復のために打てるだけの手を早急に打つことと、それに必要な予算や法律を国会に提出、審議・成立させるべきであるということである。これは、与党も野党もない、政治的な取引きは後回しにして実現を急がなければならない。
 
 そこで、具体的には、どんな対策をとったらいいか、左に思いつくままに並べてみる(紙数の関係で項目だけにさせていただく)。
 一、公共投資の追加。とくに従来の財投関連の事業、例えば高速自動車道の延伸、空港整備など。財投債、財投機関債を活用。地方単独事業の追加(必要に応じて財源とする地方債の元利補給)
 一、 年金基金など政府関係資金の株式投資の拡充
 一、 株価対策
  (一)銀行等保有株式取得機構の拡充、現在保有する株式売却の凍結をするとともに、新たに法律改正をして銀行等保有株以外にも買取り対象を拡大し、十兆円の追加買入れをする。
  (二)日銀の保有株の売却を凍結するとともに、さらに十兆円追加買入れをする。とくに銀行株。
  (三)自社株買いの規制を撤廃する。
  (四)株式の譲渡所得及び配当に関する税制(一〇%課税)の現行特例をそのまま当分の間延長する。
 一、 金融対策
  (一)ペイオフを当面凍結し、預金全額を保証する。
  (二)日本政策金融公庫の融資規模を、とくに中小企業向けについて思い切って拡充する。
  (三)金融提携強化法を復活し、三月末で期限の切れた中小金融機関に対する公的資金の注入を復活する。
  (四)中小企業に対する各都道府県の信用保証協会の保証枠を思い切って拡充する。
  (五)保険会社の保険金支払保証の制度を確認する。
  (六)貸金等についての規制を緩和するとともに資金調達を容易ならしめるような施策を講じる(例えば、銀行からの融資などを規制しない)。
  (七)会計制度を見直し、当面時価会計、減損会計を凍結する。
 
 以上のほか、なおいろいろな対策が考えうると思うが、要は、素早く具体化し、実行に移すことが肝要である。この稀に見る異常な金融、経済異変には、容易な手段では対処できないと思うが、読者諸賢如何に思われるか。
 
 


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