back 代表理事 相澤英之 のメッセージ
       「地声寸言」
  
  2014.11.13リリース

第百九十一回 <林望のイギリス観察辞典>
 「ハヤシノゾミ」が本来の読み方であるが、音で読んで「リンボウ」先生とも自から呼んでいる。
 本書は、「古今英国の諸事情をあまねく知らんと欲する人の為には、ほとんど何の役にも立たないことを目的として、特にリンボウ先生の偏狭なる視点をもって選び出した六十三項目よりなる」と最初の凡例に記してあるが、どうして永らく英国に住んで並々ならぬ好奇心をもって、英国のあらゆる社会現象を眺め印象を記したようなエッセイである。
 私も、イギリスの田舎の町のアンティーク・ショップを二、三覗いたことがあるが、大へん興味深々たる思いをし、へんな宝石のついたブローチやらローソク立てなどを買ったことを思い出している。
 ロンドンに勤務している友人の自宅も三泊ほどしたが、ロンドンからゴトゴト汽車で走ること四十分余り、家は古いが、正式の広さのあるテニスコートが一面ついていて、気が向けば何時間でもプレイをすることができる、本当に日本では考えられぬ生活の豊かさを味わしてくれる環境は羨ましく思った。イギリス人はなかなか親しくしてくれないが、一旦親しくなると本当に友人となってくれるというが、その通りだとその友人は言っていた。働くならアメリカ、住むならイギリスと言う。私にはわからないが、真実らしい。
 うまいエッセイである。
 
 


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