back 代表理事 相澤英之 のメッセージ
       「地声寸言」
  2015.11.06リリース

第二百二十四回 <一人っ子政策>
 中国では十億を超す人口を抱えてか何とか対策を講じなければならないと、いわゆる一人っ子政策を始めたのは知らない人はいないと思う。少子化現象に悩んでいる日本などから見たら、全く理解ができない政策であった。
 自然の法則に反する規制なので、どうなるものか、と思っていたが、法律による規制であるので、守られている。とみているが、北京や上海のような大都会はいざ知らず、一歩田舎に入れば、必ずしも守られていなくて、闇の、戸籍を持たないものがかなり多くて、実際は一億人もそういう人がいる、と言う話も聞いている。
 国が広過ぎて、あやしい統計が他にも多いから、あてにはならない、という人もいる。金のある人は外国へ出かけて外国で子供を生む、外国で学校に行き、外国で生活をするようなことも、少なくない、という話も聞いている。外国の銀行などに財産を移して、いざ危ない時は、外国へ逃げ出す用意をしている富裕層も少なくないという噂もよく聞いている。
 いくら中国の人口が多いからと言って、経済も膨張を続けていれば、その中きっと人手が足りなくなってくるだろうと思ってしまう、果して、昨今一人っ子政策は廃止した、というニュースを見ている。そうだろうな、と思った。一人っ子政策なんて、いかにも不自然ではないか。
 早過ぎるかも知れないが、そうなると、人口が減りつつある日本などと較べて、どうなって行くであろうか、と今から気をもんでいる。
 数は力なり、ということは人口にもあてはまる、如何に機械化し、近代化して来ても、それを繰つる人間の数が減っては、やはり民族の力は衰えてくると思わなければならない。
 もう今は昔に近くなるが、中国とソ連との関係があやしくなって、中ソ不可侵条約が問題となっている頃、私等国会一年生十数人で中国を訪問したことがある。中日友好協会の会長は廖承志さんであった。彼日く。中ソの間はいずれ切れるものとして、北京など原爆に備えて、盛んに地下壕を作っている。北京の人口四〇〇万人の半分二〇〇万人が入れるくらいのものは、もう既に出来上がっている。と言って、私共も出来上がった地下壕を見せて貰った。確かにそこで最低一ヶ月は暮らせるように、武器、弾薬など外、糧食、燃料、水などの生活必需品の倉庫が出来上っていた。
 それはそれとして、廖承志氏の日く、若し、中ソが戦うようになっても彼は人口二億ちょっと、こっちは一二億いる。一人、一人と差し違えても、差し引き十億人はこちらが残る、といって上手な日本語でニヤッとしていた。
 そうだ、計算はそうともなるのだが、そういう発想は、私どもは思いつかないでいた。数は力なり、だなと改めて思ったものである。
 その時、北京郊外に造成しつつあるというダムを視察に行った。何と、ブルドーザーもパワーシャベルの姿もないが、五、六千人の人夫が鍬とシャベルとモッコみたいな道具で盛んに土を動かしていた。少しづつ確実に土は動いて行くのである。
 北京から郊外に延びる四車線の道路を改造しているのも見た。両側に太い、アカシアの並木が並んでいる。その一本、一本に人夫が十人ぐらいづつとりついている。何だと思って、車乗っている係官に聞いてら、並木を動かして、道路幅を拡げるところだと言う。へーと思っていたが、夕方その道を戻る時は、並木が、それも細いものではない、かなり太い並木が綺麗に左右に移されて四車線の道路の恰好がついているではないか。人力もバカにならない、なとしみじみと思い知らされた。
 今でこそ中国も人件費の上昇が問題となっているというが、当時、中国の工事人夫の賃金は、月三〇元ぐらい、一元、一五円ぐらいだったと思う。昭和の四十五年頃の話である。
 楊子江の三峡ダムを造る時、百万戸の家を湖底に沈めたと聞いたが、若し日本だったら果たして実行できただろうか。いくら土地は国有地であると言っても、そんな簡単にいく話ではないであろう。
 一人っ子政策が中止となったとすれば、労働力を確保するために子供は生むであろう。もっとも、二人を限度とすると言っているから、急には増えないと思うが、増えることは間違いなかろう。さあ、一つの脅感が又現われてくる。どう対処したらいいのか。思案する。
 
 


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