back 理事長 相沢英之 のメッセージ
       「地声寸言」
  2009.01.13リリース

第三十回 <「年の終りに」>
 米国では「チェンジ」の旗印を掲げて民主党のオバマ候補が米国史上初めての黒人大統領として当選した。正にチェンジと言えよう。
 それにサブプライムで始まる米国の金融不安が世界中に拡がり、それが又実体経済に響き、米国のビッグスリーの惨状に表徴される世界景気の崩壊に繋って行った。百年に一度という異常な経済変動である。
 今や世界一の自動車メーカー、トヨタが一五〇〇億円の赤字で生産カットを打ち出せば、ソニーは一万六千人の人員整理を発表した。その他の大企業における大幅なリストラを含む生産調整は跡を絶たない。
 米国政府はFRBとともにあらゆる手段を講じて金融不安の解消、景気対策に奔走している。なりふり構わずと言ってもいいか。それでもまだ景気落ち込みの底が見えたと言われないような状態である。
 私は、この頃殆ど会う人ごとに景気はどうなると思うかと尋ねられる。それがわかるならいいが、確信をもって答えられるような状態ではない。しかし、物事には時がある。景気もその通りである。従って、いつかは必ず回復すると思うが、予言するには余りにも不確定要素が多すぎる。まぁ、どうしても見通しを言えというならば、今後の各国の対応にもよるが、まぁ、来年の夏以降徐々に景気は回復するのではないか、と答えることにしている。
 その根拠を示せと言われる人には、長年この種の問題に関心を持って来た私のカンだと答えることにしている。
 この頃は、正にグローバル化時代であるから、日本の景気も欧米初め諸外国の景気の動向と大きく関わっているから、日本だけ独歩で景気がよくなったり、 悪くなったりはしないが、それにしても日本は日本の動きもあると思っている。
 油は一バーレル一四七円ドルまで上昇したのが、今や四〇ドルを割るという暴落であり、為替は一ドル一二〇円台のものが今や九〇円を割り、八〇円に迫る円の高騰、ドルの低落ぶりである。天然資源に恵まれていない日本にとってこの状況は大変有難い環境の変化であった。今のところは鉄鋼、電力などの業界に影響しているに過ぎないが、輸入に関連する全産業に大なり小なり良い作用を及ぼすに違いない。
 日本の金融関係機関は、もちろんサブプライム問題などで大きなダメージを受けてはいるものの総じて比較的軽傷であったのではないか。日本はデフレの最中にあるような状態であったが、それに米国発の津波が襲いかかったような恰好ではないか。
 どうも日本の場合、国、地方の政府の財政赤字の解消への努力が先行して、 特にこうなってみると景気政策への真剣な努力が感じられない気がする。
 勿論、財政再建は必須の仕事であるにしても、今は、そのことばかりを言っている時ではない。あらゆる手段を盡して景気対策を先行させるべきである。
 麻生内閣の支持率が二〇%そこそこになったと各紙が報道している。私は、麻生首相が誕生する前に、首相になったら直ぐ景気対策の大風呂敷を掲げて世に訴え、直ちに解散、総選挙が一番いいと思うと進言しておいた。
 今や、解散のタイミングを失したが自民党内からも批判の声が上がっているのは、麻生内閣誕生後急速に酷い状況となった世界経済の状況下ではどう考えても与党に有利な選挙となり難いという戦況分析の結果の結論であるから、よそからゴチャゴチャ物を言う気持になれないが、麻生首相にとっては、まことに悪いタイミングでの米国始発の出来ごとであった。
 然し、こうなれば、日本の国が腹を決めて、思い切った景気対策を敢行すべきであって、狐疑逡巡は無用である。ただし、それには何でもやればいいというものではないので、これが本当に効くという手段を大胆に打ち出すべきである。
もうかなりのことを麻生内閣は実行しているが、さらに言えば次のような追加方策は如何かと思う。
一、日銀による株式又はETFの買取り。一〇兆円。
   日銀による国債買入れの大幅増額。
   株式の譲渡所得課税を源泉分離に一本化し、税率は一.五%
二、公共事業費の増額。
   新幹線、高速道路の建設促進。
三、地方交付税の増額一〜二兆円。
四、財政投融資の拡充
   中小企業対策、雇用促進対策など先端技術、環境対策技術への推進のため。
五、予算編成の重点化、効率化を促進するため平成二十二年度から予算要求のシーリング制度を廃止する。
    
 以上、思いつくように私見を述べたが、来年がいい年になりますように心から祈念いたします。
 
 


戻る