back 理事長 相沢英之 のメッセージ
       「地声寸言」
  2009.11.12リリース

第五十三回 <「たばこの増税、やるべし」>
 このところたばこの増税がしきりと採り上げられるようになっている。十一月五日の政府税調でも議論がスタートしたという。
 たばこの増税は過去においても何べんも採り上げられ、又、実行されて来た。平成十三年、私が自民党の税制調査会長の時も、発泡酒の増税と一緒に議論された。
 増税の理由は、一つには財源の確保であり、一つには国民の健康対策であった。
 JTなどから異論も出されているが、喫煙が健康に害があることは明らかであり、諸外国でもやかましく言われている。いっそ法制で禁煙という意見すらあるが、私はかつての米国での禁酒法の成り行きなどを見るにつけ、法律上の禁煙は、いたずらにトラブルを多くするのみであって適当ではない。やはり、極力たばこ課税を高めて、徐々に喫煙者を減らして行く方が合理的であると思っている。
 たばこを増税すると言うと直ぐ、たばこ小売業者や葉たばこの耕作者が反対するが、今までの実績をみても、例えば、たばこの売値を一割引き上げても、売上げが一割減るということはなく、せいぜい数パーセントで、売上金額においても減少するどころか、逆に増えている。無論、長い眼でみれば、喫煙者が減り、本数も落ちてくると思われるが、それはそれで国民の健康保持のためには結構なことではないか。
 葉たばこ耕作者についても同様、たばこ価格を増税額以上に引き上げておいて、その一部を葉たばこの収納価格の引き上げに充当すれば、耕作者は耕作面積を減らしても葉たばこの売上額を引き上げ、少なくとも維持することができるのではないか。
 私が、税制調査会長をしていた時、小泉総理からも強くたばこ税の引き上げが要請され、少なくとも一本二円以上と言われたが、当時、自由党の強い反対があって一本一円の引き上げにとどめざるをえなかった。小泉総理は後々まで不満も洩らしていたが、たばこ税の引き上げは賛成していた公明党が発泡酒の増税に強く反対をしていたこともあって、双方の顔を立て、たばこも発泡酒も小幅な増額にとどめざるをえなかった。ちなみに自由党は発泡酒の増税は反対しなかった。
 以上、いろいろ述べたが、要するにたばこ税については上げるのならチビチビ上げないで思い切って大幅に引き上げた方がいいと思う。かつてニューヨークは市税であるたばこ税を一挙に十倍に引き上げるという快挙をなしとげたが税収は三倍になったと聞いている。
 
 「あっせんでなければ天下りでない」
 政府は十一月六日の閣議で、日本郵政社長に就任した元大蔵事務次官の斉藤次郎氏らの人事について天下りではないとする答弁書を決定した。
 天下りとは、府省庁が退職後の職員を企業や団体などに再就職させることなので、法令に違反することなく府省庁のあっせんを受けずに再就職することは天下りに該当しないので、斉藤氏の人事は天下りではないということになる。
 しかし、どうも、それも変な話なのであって、斎藤氏を日本郵政の社長に据えたのは、本人も明言している通り亀井郵政大臣である。省の長である大臣があっせんをしたのなら天下りに該当せず、省の事務次官以下事務方があっせんをしたのなら天下りになるとでも言うのだろうか。どうも理屈が合わぬ。
 いっそもう天下りがいいとか、悪いとか言わずに、正に適材を適所に配置するのだと言った方が、よっぽどスッキリするし、世人も納得し易いのではないか。そもそも官とか民とかで区分けして、およそ官であったものが、政府関係の機関に就職することを禁じるといったようなことは、明らかに差別ではないか。
 民から官に移ることも無論反対ではないが、ならば官から民に移ることも差支えないではないか。
 
 「パラグアイ駐日大使に豊歳氏」
 パラグアイ駐日大使田岡氏の後任に豊歳直之氏が任命され、十月七日に来日した。信任状の奉呈はまだということであったが、十一月六日新大使の歓迎会が全日空インターコンチネンタルホテルで日本・パラグアイ友好協会の主催で行なわれた。
 豊歳氏は日本で大学を終えてパラグアイに渡り、トヨタ自動車の販売などに掌り、日本人会の会長などもしていたれっきとした日本人の一世であった。前任田岡氏に引き続いて同じく日本人の一世の豊歳氏の駐日大使任命は、パラグアイ政府の日本に対する友好親善の度合いを示すものとも受けとられ、近頃嬉しい話題となっている。
 今から十六年前、日系移民のパラグアイ移住六十周年の記念の会にワスモシ大統領の招きで私が出席をしたが、私が主唱して作った日本・パラグアイ友好議員連盟の会長としてであった。
 ブラジルは別格であるが、ペルーなどとともに日系移民の多いパラグアイは農業国として発展をしていたが、日系移民七千人は同国の農産物生産の面で大きな役割りを果している。輸出小麦の七%、大豆の二二%は日系移民の手によるものとされ、世界最大とされるイグアスの瀑布の近くの日本人農協の研究所では不耕起農法の導入で先進的な役割りを果たしていると有名であり、私も現地で説明を受けて感銘したことなども思い出す。
 何せ日本から片道三十時間という長距離フライトを余儀なくされているパラグアイであるが、極めて友好的な歓迎を受けたことは忘れられない。
 私は、議員リタイア後議連会長は河村氏にお願いしたが、日本パラグアイ友好協会の会長として及ばずなから両国の友好親善関係の推進に少しでも協力したいと思っているが、大使歓迎会当夜もアルバの演奏に耳を傾けながら、暫し一夕を楽しむことができたことは幸せであった。
 
 「機密費はない?」
 就任当初、官房機密費は「承知していない」と強弁した平野官房長官は十一月五日、一転して存在を認めたうえで、使途や金額を公表しない考えを明言した(十一月六日、朝日・朝)。
 確かに「官房機密費」なる予算科目は存在しない。その意味では官房機密費はないといってもいいが、通常は内閣官房に計上されている報償費(〇九年度一四億六一六五万円)のことを指していると考えられる。
 報償費は内閣官房以外、外務省その他の官庁にも計上されているもので、用途は制限されていないし、又、支出に際しては第一次受領者の受領証さえあればいいことになっている。
 その使途、金額には、その性格上、昔から公表する必要はないということになっているので、平野官房長官の明言は従来通りであって、不当とは言えない。
 鳩山首相が野党時代、〇一年六月、当時の小泉首相との党首対論で、「民主党も十年、二十年後に(機密費の中身を)必ず公開する」と訴えたという過去の事実を想起して貰いたいが、現実に政権の座についてみると、到底実行できないことを覚ったのだろうと思う。
 ただ、五日記者団に「官房機密費があるのかどうかも存じていない状況で、官房長官から『自分に委せてもらいたい』と言われているので、一切この問題には触らないようにしていきたい」(同上)と語ったというが、それは余りにも詭弁ではないか。官房の報償費について首相がノータッチというのも変だし、不自然だ。潔く前言を取り消し、官房報償費の支出内容は公表すべきものではなく、公表しないと明言したら如何。
 
 


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