back 理事長 相沢英之 のメッセージ
       「地声寸言」
  2011.08.18リリース

第百十回 <観光境港の話>
 この頃用務で東京と鳥取県の間を往復しているが、とくに感じることは米子線の乗客が増えていることである、満席の日も多い。乗客のかなりの部分は会社関係の人だと見られるが、子供達も含めてキタロー云云の話声が聞えるところをみると、境港のキタローロードの見物客も少なくないことがわかる。そう言っては身も蓋もないが、たかが妖怪のブロンズ像が並んでいるからと言って、どこが面白いのだ、と言うのは世間を知らない人のたわ言であって、実際は昨年で言えば一年間に三六〇万人もの観光客が境港へ押し寄せて来ているのである。
 五年前のことを思い浮べると昔日の感に耐えない。米子境港の間の鉄道にキタロー列車が走り、米子空港も米子キタロー空港と呼ばれるようになった。
 これがいつまで続くかが問題である。日本中のテーマ・パークがディズニーランドを除いて皆不振であるという。ディズニーランドは日がな遊べる施設があって何度でも行きたいと思わせるところがあるが、さて、キタローロードにリピーターを引き付ける力があるだろうか。あゝ、見た、見たということになっては先が思いやられる。
 キタローの妖怪像に加える魅力を町に付加できないと色々考えてみるが、何と言っても魚の町境港を売り出せるのはサンフランシスコのフィシャーマンズ・ワーフのように地元で揚がった鮮魚をおいしく食べさせるレストランを整備するのが一案だと思っている。かって三十年以上も前からこのことを言っているのだが、地元の魚市場との関係がうまく行かないのか、未だに実現しない。
 ホテルを建設する話が前からある。私が三十年以上も前に友人の経営している法華クラブに懇請して多少の損も覚悟で進出して貰ったが、立地の点もあり、又、地元の旅客組合の反対があって宿泊客室数を当初計画の三分の一ぐらいに縮めさせられたことなどもあり、経営が行き結って身売りせざるをえないような羽目になったのは、甚だ残念でもあり、友人にも済まなく思っていた。
 市の方でもっとJRの境港駅近くにホテルをという意向もあるようであるが、果して泊り客を確保できるかどうか、皆生温泉の旅館群が苦戦をしている現状を見る時、思い切ってホテルを建てる決心がつかないのか、業者も二の足を踏む状態である。
 境港と島根県を中海を繋いで渡る中海大橋も経費の分担割合をめぐる両県の話し合いの難航もあって、当初計画より大幅な遅れを見たが、とにかく完成した、私もこれにはとくに財務省の予算措置をめぐって大いに協力したつもりである。観光の面からしてもその役割りを大いに期待されていた。
 ともあれ、観光トットリの名にふさわしい集客の増加のため、さらに考えうるいろいろな手だてを盡す努力を惜しむべきではない。競争の世の中、ぼんやりしていては成果が挙がらない。
 
 


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