back 理事長 相沢英之 のメッセージ
       「地声寸言」
  2012.11.01リリース

第百三十三回 <戦争>
 昭和十七年半年繰り上げで学徒出陣をし、人並みに戦地も経験をした。前線で指揮をとる役柄ではなかったが、爆撃、銃撃は何度も受けて運よく生命が繋がって来た。生死の別れは本当に微妙なところにあって、心掛けがよかったからとか、一生懸命働いたからとか、そんなことは全く関係がない所で決められて仕舞う。人の運命は本当にわからないものである。
 それにしても戦争は嫌だ。人と人との殺し合いほど嫌なものはない、無意味なものはない。然し人と人、民族と民族、国と国との間の争いはなくならない。経済がからむことが多いだろうが、やはり、そういう利害、打算を越えて争いの決着のつかないのが民族の別であり、宗教の差ではないか、と思う。これは話し合っても解決はつかない。相手を口で説得できなければ、手を出すことになる。暴力を振っても相手を屈服させようとする。相手が参らなければ、殺すしかない、と思うようになる。そこは戦争だ。
 戦争となれば、何よりも武器が必要である。勢い、軍備の競争となる。近代の戦争は、大昔と違って、人の体力や技術の問題ではない。情報と軍備である。どっちにしても金がかかるし、キリがないとも言える。然し、負けた時の事を考えると、いい加減で済ますことが難しくなる。GDP一%以内に留めるとか、何とかいう議論は、ナンセンスである。一%以内に防衛費を納めたからといって、もし万一戦って負ければ、誰も誉めてはくれない。バカな国だと言われるだけではないか。
 そこで、お互いに戦争をしないようにしようと思えば、軍縮について、これこそ真剣に話し合わなければならない。先ず、核を廃止する。長距離兵器を思い切って減らす。将来、軍備をなくせればいいが、そこは夢物語としても、軍縮については、過去に何度もいわゆる列強の間で話し合われて来たし、これからも出来ないことではない。
 国内治安の問題もあるから、軍備全廃という訳には行かないが、何も生産しない兵器の準備はお互いに出来る限り制限するようにしたらいい。そして、節約した金は社会福祉に回すのである。
 それにしても、現在は、各国、各民族の間に福祉の格差は大きすぎる。われわれはその実情をつぶさに知ることは出来ないが、情報の発達した世の中であるから、かなりの程度に知ることはできる。世界全体の福祉のレベルをあげることは本当に容易なことではないが、人類同志助け合いが出来ないものでもないと思う。
 もっとも、こんなことを言っていると、何を太平楽を並べているか、と笑われるかもしれない。ただそう言う夢を持っていることは間違いだとは思わない。持つべきだと思う。何時になったら実現できるか。それはわからないが、だからといって諦めてはならないと思うが、如何。
 
 


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