back 代表理事 相澤英之 のメッセージ
       「地声寸言」
  
  2015.04.08リリース

第百九十九回 <健康・医療(投資拡大)>
 政府は成長分野と期待されるヘルスケア(健康・医療)産業の育育に向け、政府系ファンドの地域経済活性化支援機構を通じた投資を拡大する。患者が在宅ケアを受けやすくする体制を整備するため、大阪府内の病院と共同出資で新会社を設立するほか、薬の訪問調剤事業を強化する千葉県の薬局も支援する。同機構の増資も実施して投資余力を高める。 地域支援機構が週内にも発表する見通し。政府は成長戦略に医療・介護分野の育成を掲げている。同機構の予測では、医療機関や介護事業の市場規模は2010年実績の48兆円から20年に78兆円まで拡大するという。周辺事業者の市場規模も24兆円から39兆円へ拡大するとみている。
 ただ、この分野は非営利サービスである病院や介護の延長上にあり、黒子化するまでに時間がかかる。設備投資資金の回収に時間がかかれば、銀行も貸し出しに及び腰になりがちだ。返済期間のある融資では限界があるため、ファンドを通じた中長期的な支援が必要と判断した。
 ヘルスケア投資は常陽、千葉、横浜、福岡、西日本シティの地方銀行5行とみずほ銀行が地域支援機構と共同で昨年9月に設立したファンドを通じて実行する。同ファンドは昨年11月に合計19行に拡大し、投資枠100億円を用意している。
 これは、今月(3月)三十一日の日経夕刊のトップ記事の写しである。
 断っておくが、私は、反対の立場からこの記事の紹介をしているのではない。
 私は、この趣盲に賛成であるが、一言言いたい。
 それは、この種の新しい形の融資に対してえてして市中の一般銀行が消極的なことである。
 大事な一般市民の金を預かっているのであるから、その運用に責任を持っているので、慎重になることは決して悪いことではない。
 しかし、慎重過ぎるのも余り、この記事の中にも書いてあるとおり「銀行も貸し出しに及び腰になりがちだ」が、そこが問題なのである。
 石橋を叩いて渡らず、という言葉があるが、それ式に、何事につけても担保や保証を要求し、よく検討もされ、事業の執行に当たる人達の識見、能力も充分信頼されるに拘わらず、中々融資を実行しないのは、どうも金融機関としての役割りを充分果たしていないのではないか、と思われることがある。私自身話を聞いていて、そう思うことが屡々あるからである。
 そうなることの理由の一つに金融庁の検査の在り方があるのではないかと思うが、どうも、その心配が段々大きくなってくるような気がしてならない。
 然し、私は、今直ぐにその態度を改めるべきと主張するつもりはない、ただ、とくに国家的要請がある場合において、政府の判断で融資、出資を行う必要がある場合もあるし、そうした方がよいと思われる場合もある。
 それに備えてどうすればよいのか。
 私は、前から財政投融資の在り方をも一度見直す必要がある、ないしは、見直した方がよいと思っている。
 融資、出資にはリスクがつきものである。それだからこそ利子もとっているのではないか。
 以前の財政投融資の原資の主力は郵便貯金や簡保資金であって、政府がバックについているという信用で、一般市中金融機関よりも預金を集めやすく、又、市中の金融機関よりもちょっと低い金利で融資をすることも可能であったのである。
 多少リスクはあるが、融資を行うべき国家的要請がある場合もある。災害復旧関係の融資は、その例であるし、又、海外の後進地域に対するいろいろな面での融資も必要となろう。
 従って、従来のやり方のように、市中の金融機関をかばう余り、財投資金の活動をできるだけ縮めて行こうという方向自体再考三考すべきではないか、と思うのである。
 そういう考え方は、もう古くて通用しない、とでもいうのであろうか。私は、そうは思わない。
 市中の金融機関が地方銀行も含めて、海外への進出をももくろんでいるように聞いているが、まことに結構なことであると思う。そのような場合、財政投融資機関と何らかの形で連繋をとって行くこともいいことではないか、金融再編成のスケジュールの中に、このような考え方を是非入れて欲しいと思っているが、諸賢のお考え如何。
 
 


戻る