back 代表理事 相澤英之 のメッセージ
       「地声寸言」
  2015.05.29リリース

第二百八回 <東京の高速道を地下に沈めよう>
 東京の街のメインストリートの上を遠慮もあらばこそ走っている高速道を地下に沈めよう、という運動が起きていることを耳にしている。
 とんでもなく巨額の金がかかる上に所によっては町の姿が一変するような大工事は不要だという強い声もある。
 もとは、あの日本橋の上に橋をかけて、景観もへったくれもない無残な姿になっているのを直したい、という声が一つの起点となったのか、とも思う。
 東京の高速は昭和三十九年の前回の東京オリンピックの時、差し追られて高速道を晝夜兼行で建設したことが最大の原因であろう。その時、何故、高速道は地下を走らせる、というアイディアが湧かなかったのかな、と思うが、当時は地下五〇メートル以下の大深度は自由に使用しうる、という制度はなかったし、又、地下を掘る工事費は地下を走らせるより遙かに金も時間もかかると思われていた。
 道路の上に道路を造るコストには当然、その道路によって使用不可能となる道路の利用ベネフィットの喪失をコストとして加算しなければならないし、又、高速道はその下の国道その他公道に使用料を支払わなければおかしい、とわれわれは主張していたが、そういう声は一切踏み潰されたような気がする。
 公共事業についてコストとベネフィットと比較検討し、ベネフィットの多いものから着手して行くという手法が表に出して採り入れられるようになったのは本四架橋のルートと建設の順番を決めよう、とする時であった。米国のPPBSと言われた手法であった。予算編成の科学的手法とも呼ばれていた。
 それにしても、あの高速道の建設は安くなかった。中でも一番高かったのは、赤坂見附の所の橋で、当時メーター六〇〇万円だったと記憶している。建設中に道路が陥没するとゆうような事故も何回かあった。
 そもそも運動競技の施設は末永く使えられるものもなくはないが、その目的のためだけに莫大な資金を投じて建設するか、あとは全然又は殆んど使われなくて、その維持管理のための経費も含めて地方団体の大きな負担となった例ば数えるに暇がない。各県持ち回りで国体を実施して来たが、団体を実施した県はあとで赤字となる所が多い、という現象があって、国体の持ち回りを止める議論が繰り返された時期があった。
 陸上競技場もそうだが、例えば馬術、射撃、ボートなどなどの競技施設なども大ていの県があとで持て余していたのではないか。
 国体の主催県が必ず優勝するというようなからくりも運動競技としての存在価値を失わせる原因の一つとなっていた。
 話は少し滑ったような気もするが、要は施設の建設に当って、いろいろな角度から充分検討して貰いたい、とゆうことが第一に言いたいのである。
 目的を果されそうなり、いくら金がかかっても構わないような考え方は先進国のとるべきものではないと思う。
 それはそれとして、冒頭に述べた首都高速道を地下に沈める案は本当に真剣に検討して貰いたい。
 地下五〇メートルを超える大深度の土地の使用はそれ自体金がかからないし、首都高を地下に沈めれば、まずそのために使えなくなっている土地が道路として使えるようになる。景観のことは言うまでもない。
 
 


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